Contents
不定詞の意味上の主語
「to不定詞は名詞・形容詞・副詞として使われもう動詞ではない」と伝えてきましたが、腐っても動詞。訳を考えれば、必ず誰が誰にそれをするのかという「意味上の主語(S')述語(V') 目的語(O')」といった関係が残っています。to不定詞を含んだ文で少し難しいなと感じる英文は、この考え方ですっきり見えてきますよ。
次の文を和訳しなさい。
ex. | I can't expect her to help you with your work. expect「期待する(Vt)」 help 人 with ことがら「~さんの・・を手伝う」 |
普通にスラッシュを入れていくとこうなります。
ex. | I can't expect her / to help you with your work. 私は彼女に期待できない / ~ |
スラッシュのto以下はどうなっているのでしょうか。動詞もどきになったhelpも元々は他動詞(Vt)なので、誰が誰をhelpするのか、その意味上の主語(S')と目的語(O')があるはずです。今まではメインの主語・述語・目的語の関係だけを考えてきました。
S | Vt | O |
I | can't expect | her to help you~. |
でもこれからは意味の上での主語・述語・目的語の関係も考えてみましょう。
I can't expect | her | to help | you ~. |
S' | Vt' | O' |
↓
I can't expect her / she help you with your work.
私は彼女に期待できない / 彼女がきみの仕事を手伝う
彼女が君の仕事を手伝うことは期待できない
準動詞の意味上の関係 準動詞(不定詞・動名詞・分詞)は、動詞もどきになっても、 元々の主語・述語・目的語などの関係は残っています。 |
不定詞の意味上の主語4パターン
不定詞の意味上の主語は、大きく4パターンに分けられます。この知識は文法問題や長文問題で応用されるくらい重要な内容です。その分、マスターするまでには時間がかかると思いますが、意識せずにやり過ごす人と普段から意識している人では、伸びが全く違ってきます。この内容はぜひ時々戻ってきて復習をしてください。
不定詞の意味上の主語4パターン
1. 文の主語と一致する場合 |
1. 文の主語と一致する場合
文の主語と一致する場合は繰り返しになるので、省略されています。
ex. | I have nothing more to say. 「もう何も言うことはありません」 |
2. 一般の人の場合
一般とはみんなに当てはまるという意味です。そのためこれもあえて主語は言いません。everyoneが省略されていると考えましょう。
ex. | It is wrong to tell a lie. 「嘘を言うのは悪いことだ」 |
3. 文の主語と一致しない場合
to不定詞の前に「for 人」を入れて意味上の主語(S')を明示します。このパターンではfor ~ to・・がS'V'の関係になるので、スラッシュはforの前に入れた方が、文は見やすくなります。
ex. | This book is too difficult for me to read. (readの主語がThis bookはありえませんね) 「この本は難しすぎてぼくには読めない」 |
cf. | This book is too difficult to read. (S'はもちろん一般の人です) 「この本は難しすぎて(誰にも)読めない」 * "cf."は参照の意味です |
4. 動詞 人 to do構文の場合
頻出・最重要の構文です。見かけたらすぐ気づいて欲しいのですが、慣れるまでは時間がかかるでしょう。この構文をつくる動詞は多く、3と違って意味上の主語にforはつけません。これ以降ではask 人 to do構文として説明していきます。
ex. | I want you to keep waiting for some time. 「きみにちょっと待ってて欲しいんだ」 (≒I want / you keep waiting ~.) |
意味上の主語・述語を理解すると、色々な問題を解くのに利用でき、 難しくて知らない単語の意味を類推できることもあります。その応用例を少し紹介しましょう。(4)(5)
【演習】次の各文の適当なところにスラッシュを入れ((3)を除く)、[ ]内の指示に従って答えなさい。
(1) | It is natural for parents to love their children. | [和訳] |
(2) | There is no room for you to sit.(room「スペース」) | [和訳] |
(3) | 「このケースは重すぎて彼女には運べない」 [case/too/her/for/this/is/heay/to/carry] |
[語順整序] |
(4) | The book is thought to ( ) in the middle of 17th century. 1. write / 2. writing / 3. have written / 4. have been written |
[適語選択] |
(5) | Pedestrians are permitted to have the right of this way on Sundays.(right「権利」) | [和訳] |
ヒント
(3) | |
(4) | |
(5) |
このように、意味上の主語(S')・述語(V')・目的語(O')は、今度色々な応用ができるようになります。
意味上の主語にofを使う時は?
to不定詞の意味上の主語はfor+人の形でしたが、it ~ for ~ to 構文で~にはさまる形容詞が「人の性質を表す形容詞」になると、it ~ of ~ to 構文になります。この形容詞は頻出語がほぼ決まっているので、暗記しておきましょう。
it ~ of ~ to 構文の形容詞 nice/good/kind 親切な/polite: 礼儀正しい/wise: 賢明な(+の形容詞) silly/stupid/foolish: 愚かな/rude: 無礼な/careless: 不注意な(-の形容詞) |
it ~ for ~ to 構文との違いは、形容詞がどこを修飾しているかの違いです。和訳から確認してみましょう。
ex. | It is natural for parents to love their children. 「親が子供を愛するのは自然のことです」 |
「親が子供を愛すること」をnatural「自然だ」と言っています。parents「親」= natural「自然だ」と言っているわけではないですね。対して
ex. | It is careless of you to make such a mistake. 「そんな間違いをするなんて君は不注意だな」 |
「君は」=「不注意だ」と言っています。このように、意味上の主語を修飾する「人の性質を表す形容詞」 になった時にofが使われます(でも難しく考えずに形容詞を覚えれば十分です)。you = carelessと言っているので、下のような書き換えが出来ます。スラッシュを入れるところも、to不定詞の前の方が意味が分かりやすいですね。
ex. | It is careless of you to make such a mistake.
= You are careless to make such a mistake. |
【演習】( )内に適する前置詞を入れ、全文を和訳しなさい。
(1) | It is quite careless ( ) him not to write it down. |
(2) | It is necessary ( ) you to learn the words by heart. |
(3) | It is very kind ( ) her to give up her seat to the old woman. |
(4) | It will be better ( ) you to start early tomorrow. |
ヒント
(1) | |
(2) | |
(4) |