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第5講 不定詞の意味上の主語

不定詞の意味上の主語

「to不定詞は名詞・形容詞・副詞として使われもう動詞ではない」と伝えてきましたが、腐っても動詞。訳を考えれば、必ず誰が誰にそれをするのかという「意味上の主語(S')述語(V') 目的語(O')」といった関係が残っています。to不定詞を含んだ文で少し難しいなと感じる英文は、この考え方ですっきり見えてきますよ。

次の文を和訳しなさい。

ex. I can't expect her to help you with your work.
expect「期待する(Vt)」
help 人 with ことがら「~さんの・・を手伝う」

普通にスラッシュを入れていくとこうなります。

ex. I can't expect her / to help you with your work.
私は彼女に期待できない / ~

スラッシュのto以下はどうなっているのでしょうか。動詞もどきになったhelpも元々は他動詞(Vt)なので、誰が誰をhelpするのか、その意味上の主語(S')と目的語(O')があるはずです。今まではメインの主語・述語・目的語の関係だけを考えてきました。

S Vt O
I can't expect her to help you~.

でもこれからは意味の上での主語・述語・目的語の関係も考えてみましょう。

I can't expect her to help you ~.
S' Vt' O'

I can't expect her / she help you with your work.
私は彼女に期待できない / 彼女がきみの仕事を手伝う
彼女が君の仕事を手伝うことは期待できない

準動詞の意味上の関係
準動詞(不定詞・動名詞・分詞)は、動詞もどきになっても、
元々の主語・述語・目的語などの関係は残っています。

不定詞の意味上の主語4パターン

不定詞の意味上の主語は、大きく4パターンに分けられます。この知識は文法問題や長文問題で応用されるくらい重要な内容です。その分、マスターするまでには時間がかかると思いますが、意識せずにやり過ごす人と普段から意識している人では、伸びが全く違ってきます。この内容はぜひ時々戻ってきて復習をしてください。

不定詞の意味上の主語4パターン

1. 文の主語と一致する場合
2. 一般の人の場合
3. 文の主語と一致しない場合
4. 動詞 人 to do構文の場合

1. 文の主語と一致する場合

文の主語と一致する場合は繰り返しになるので、省略されています。

ex. I have nothing more to say.
「もう何も言うことはありません」

2. 一般の人の場合

一般とはみんなに当てはまるという意味です。そのためこれもあえて主語は言いません。everyoneが省略されていると考えましょう。

ex. It is wrong to tell a lie.
「嘘を言うのは悪いことだ」

3. 文の主語と一致しない場合

to不定詞の前に「for 人」を入れて意味上の主語(S')を明示します。このパターンではfor ~ to・・がS'V'の関係になるので、スラッシュはforの前に入れた方が、文は見やすくなります。

ex. This book is too difficult for me to read.
(readの主語がThis bookはありえませんね)
「この本は難しすぎてぼくには読めない」
cf. This book is too difficult to read.
(S'はもちろん一般の人です)
「この本は難しすぎて(誰にも)読めない」
* "cf."は参照の意味です

4. 動詞 人 to do構文の場合

頻出・最重要の構文です。見かけたらすぐ気づいて欲しいのですが、慣れるまでは時間がかかるでしょう。この構文をつくる動詞は多く、3と違って意味上の主語にforはつけません。これ以降ではask 人 to do構文として説明していきます。

ex. I want you to keep waiting for some time.
「きみにちょっと待ってて欲しいんだ」
(≒I want / you keep waiting ~.)

 

意味上の主語・述語を理解すると、色々な問題を解くのに利用でき、 難しくて知らない単語の意味を類推できることもあります。その応用例を少し紹介しましょう。(4)(5)

【演習】次の各文の適当なところにスラッシュを入れ((3)を除く)、[  ]内の指示に従って答えなさい。

(1) It is natural for parents to love their children.

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It is natural / for parents to love their children.
「それは自然なことです / 親が自分の子供を愛することは」
「親が自分の子供を愛するのは自然のことです」
[和訳]
(2) There is no room for you to sit.(room「スペース」)

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There is no room / for you to sit.
「スペースはない / あなたが座る」
「あなたが座るスペースはないよ」
[和訳]
(3) 「このケースは重すぎて彼女には運べない」
[case/too/her/for/this/is/heay/to/carry]
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this case is too heavy for her to carry.
[語順整序]
(4) The book is thought to (    ) in the middle of 17th century.
1. write / 2. writing / 3. have written / 4. have been written
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The book is thought / to have been written in the middle of 17th century.
[適語選択]
(5) Pedestrians are permitted to have the right of this way on Sundays.(right「権利」)

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Pedestrians are permitted / to have the right of this way on Sundays.
「歩行者は許されている / 日曜日にこの道の権利を持つことを」
「日曜日には歩行者はこの道を自由に歩ける」 (意訳)
「この道は日曜日に歩行者天国になる」 (もっと意訳)
[和訳]

ヒント

(3)
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日本文で「このケースは重い」ので「彼女は運べない」の2つの主語・述語に気づきましょう。
(4)
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受験レベルの問題です。難しくは見えても、考え方はシンプルです。
1. 4講座受動態の知識を使います。to不定詞の意味上の 主語を考えてみましょう。おそらくThe bookと類推、選択肢のwriteと併せて考え考えると、 能動態 The book ~ write /受動態 The book ~ be written のどちらがふさわしいか。もちろん受動態ですね。 選択肢で受動態be 動詞+過去分詞を含んだ表現は一つしかありません。2. 1講座文型と4講座受動態の知識を使います。選択肢の自動詞・他動詞を考えてみましょう。もちろんwrite(Vt)。これが入るとすると、(write) in the ~ となり、 目的語(O)がないので×。選択肢の1~3は全て能動態の選択肢で同様に×(write / writing / have written) in the ~。対して、4は受動態の選択肢。 (第3文型の)受動態は後ろに目的語がありません(be written) in the ~。選択肢の自動詞・他動詞・目的語を考えることでも、大きなヒントになります。
(5)
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これも受験レベル。Pedestrians の意味を類推しましょう。"to have the right of"「~の権利を持っている」の意味上の主語はなんでしょうか。おそらくPedestriansと類推、ということは、"Pedestrians ~ have the right of ~."そうするとこの単語は「人」か「物」か、おそらく「人」と類推。

Pedestrians are permitted / to have the right / of this way / on Sundays.
~の人は..されている / 権利を持っている / この道の / 毎日曜日に

ここで何のことを言っているのか、考えてみましょう。毎週日曜日に人が道の権利を持つとは? 歩行者天国の話なのです。とつながれば、Pedestrians = 歩行者。

次は are permitted。「言われている」「見られている」「禁止されている」「許可されている」 など、適当に当てはめて考えてみるんです。そこそこふさわしいものが見つかればそれで十分です。
permit = 認める、許可する。
「歩行者は毎週日曜日にこの道の権利を認められています」(直訳)
=「この道は毎週日曜日に歩行者天国になります」(意訳)

このように、意味上の主語(S')・述語(V')・目的語(O')は、今度色々な応用ができるようになります。

 

意味上の主語にofを使う時は?

to不定詞の意味上の主語はfor+人の形でしたが、it ~ for ~ to 構文で~にはさまる形容詞が「人の性質を表す形容詞」になると、it ~ of ~ to 構文になります。この形容詞は頻出語がほぼ決まっているので、暗記しておきましょう。

it ~ of ~ to 構文の形容詞
nicegoodkind 親切なpolite: 礼儀正しいwise: 賢明な(+の形容詞)
sillystupidfoolish: 愚かなrude: 無礼なcareless: 不注意な(-の形容詞)

it ~ for ~ to 構文との違いは、形容詞がどこを修飾しているかの違いです。和訳から確認してみましょう。

ex. It is natural for parents to love their children.
「親が子供を愛するのは自然のことです」

親が子供を愛すること」をnatural「自然だ」と言っています。parents「親」= natural「自然だ」と言っているわけではないですね。対して

ex. It is careless of you to make such a mistake.
「そんな間違いをするなんて君は不注意だな」

君は」=「不注意だ」と言っています。このように、意味上の主語を修飾する「人の性質を表す形容詞」 になった時にofが使われます(でも難しく考えずに形容詞を覚えれば十分です)。you = carelessと言っているので、下のような書き換えが出来ます。スラッシュを入れるところも、to不定詞の前の方が意味が分かりやすいですね。

ex. It is careless of you to make such a mistake.

You are careless to make such a mistake.
= You are careless / to make such a mistake.
「君は不注意だな / そんな間違いをするなんて」
= It is careless of you / to make such a mistake.

【演習】(  )内に適する前置詞を入れ、全文を和訳しなさい。

(1) It is quite careless (    ) him not to write it down.

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of 「それを書きとめなかったとは彼は全く不注意だ」
(2) It is necessary (    ) you to learn the words by heart.

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for 「あなたはその単語を暗記する必要がある」
(3) It is very kind (    ) her to give up her seat to the old woman.

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of 「老婦人に席をゆずってあげるなんて彼女はとても親切だ」
(4) It will be better (    ) you to start early tomorrow.

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for 「あなたは明日早くに出た方がいいですよ」

ヒント

(1)
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write down「書きとめる」
(2)
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learn by heart「暗記する」
(4)
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better は good の比較級です。つまり、

It will be good (    ) you to start early tomorrow.
「明日早く出た方がいいよ」

この場合のgoodは「親切な」ではなく「良い」の意味なので、good≠you、つまりforです。goodだけはこのように2つの使い分けがあるので、意味からfor/ofを考えます。